「……お祭り、誘えたよ」


その夜、クロと会うと開口一番そう告げた私に、彼は瞳を丸くしたあとで苦笑した。


「なんだよ? どういう心境の変化?」


「別に……。せっかく友達って言える子ができたんだし、もうちょっと頑張らなきゃいけないかなって思っただけ。そんなに深い意味はないよ」


「そうか」と微笑したクロは、なんだか寂しそうにも見えたけど、それを確かめるだけの余裕も勇気もなかった。


だって私は、彼と会えた喜びともうすぐ会えなくなってしまう悲しさに苛まれていて、平静を保つだけで精一杯だったから。


昼間の楽しかった時間との落差が激しいせいでため息が漏れそうになったけど、不意に優しく破顔したクロに心が惹きつけられ、吐くはずだった息を呑んでいた。


「でも、もし深い意味がなかったとしても、千帆がちゃんと成長してることには変わりないよ。これで、心配しなくて済みそうだ」


嬉しそうに落とされた言葉が、鈍色の刃となって胸を深く刺す。


だけど、感じた痛みには気づかない振りをして、出来るだけの笑みを浮かべた。


クロとこうして過ごせるのも、今日を入れてもあと六日。


だから、この大切な時間を今までよりも大切にしたくて、少しでも笑っていたかった──。