「ちーちゃん、LINEだとあだ名で呼んでくれるのに、面と向かってだと名字のままなんだもん」


「あ、ごめんね……。なんか、まだ慣れなくて……」


呆れられてしまうかもしれないと不安になって俯くと、「じゃあさ」と中野さんの声がした。


「夏休み中に練習しようよ。一緒に宿題したりお祭りに行けば、きっと自然と呼べるようになるよ」


「あ、いいね! まぁ、たしかにちーちゃんって、すぐにあだ名とかで呼ぶの苦手そうだもんね」


「そうそう。みんながみんな、ほっちゃんみたいに怖いもの知らずじゃないんだよ」


「今ちょっとディスったよね?」


「一応褒めたよ? 誰ともでもすぐに仲良くなれてすごいなー、ってこと」


「絶対嘘だ。中ちゃん、半笑いじゃん!」


笑い合うふたりからは私に対して呆れたりしていないことが伝わってきてホッとしていると、彼女たちの視線が同時に私に向けられた。


「それでどう?」


「うん。……ぜひ、お願いします」


「なんで敬語なの?」


中野さんの言葉に頭を下げると堀田さんが吹き出して、直後に三人の笑い声が弾けた。


ツキは再び私の膝の上にやってきて、その重みと体温を感じながら、夕陽が空を染めるまで絶えることのなかった笑顔で過ごした──。