「ツキ……」


不安になった私の声に、ツキがピクリと反応して顔を上げた。


「あのね、引っ掻いたりしちゃダメだよ?」


私を見ているツキをそっと抱き上げて、顔の前で真っ直ぐ見つめ合う。


「堀田さんと中野さんはこんな私に優しくしてくれるいい子たちだから、きっとツキも仲良くなれると思うの。だから、最初はちょっとびっくりしちゃうかもしれないけど、いい子にしててね?」


身勝手かもしれないけど、抱いている本音を零した。


ツキのことを可愛いと言ってくれたふたりがツキを好きになってくれたら嬉しいし、それをきっかけにもっと仲良くなれるかもしれない。


まるでツキを利用するみたいに思えたけど、また中学時代のようにはなりたくない。


そんな気持ちでツキを見つめていると、私の顔をじっと見ていたツキが舌をペロッと出した。


そっと顔を近づけてみると、私の鼻先をペロペロと舐めたツキが「ニャア」と鳴いた。


それはまるで、不安に包まれていた私の気持ちを汲み取ってくれたかのようで、顎の下を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らしたツキに破顔した。


「ツキは世界一可愛いから、きっとふたりもツキを好きになってくれるよ」


親バカなセリフを口にすると、ツキは嬉しそうに鳴いた。