「どうしよう、ツキ! 明日、堀田さんと中野さんが遊びにきてくれることになったの!」


帰宅早々、部屋に走ってドアを開けた私は、『ただいま』と言うのも忘れてツキを抱き上げた。


「ニャア」と鳴いたツキは、びっくりしたように私を見ていて、そこでようやく深呼吸をして心を落ち着かせた。


「えっと、ごめんね。ただいま、ツキ」


私の言葉で再び小さく鳴いたツキを抱いたままベッドに腰掛け、膝の上にツキを乗せる。


「あのね、明日ふたりが遊びにきてくれるの。ツキに会いたいんだって」


私の話を聞いているのかいないのか、膝の上でリラックスし始めたツキは前足をペロペロと舐めている。


その姿に笑みが零れたけど、すぐにハッとして不安要素に気づいた。


「大丈夫……だよね?」


ツキと出会った時、飼い主に捨てられたせいなのか、それとも私が拾うまでにひどい目に遭ったのか、とにかく警戒心を剥き出しにしていて、あの頃は何度も引っ掻かれた。


今でこそ私の傍を離れないような甘えん坊だし、両親にもちゃんと懐いているけど……。


ツキは、これまでにかかりつけの動物病院のスタッフ以外の他人と接したことがないから、もしかしたら知らないふたりと会うと警戒心を剥き出しにするかもしれない。