そんなはずない……。だって、私は別にクロのことなんて……。


“勘違い”だと言い切れる理由を探したいのに、胸の奥深くで眠っていた感情がそっと目覚めたことを感じて言葉を失った。


「千帆、そんな顔するなよ。今日はふたりも友達ができたんだから、さっきみたいに笑えよ」


私が落ち込んでいることを感じ取ったらしいクロは、いつものように優しい声音でそんなことを言ったけど、私の頭の中を占めるのはさっきまでとは別のこと。


もちろんまだ胸は痛むし、彼が自分のことを最後まで話そうとしない姿勢を貫くつもりなのも気になる。


それでも、今は“信じがたい感情”を勘違いとして処理できないことに気づいて、戸惑いと驚き、そして感じたこともないほどの切なさを抱いた。


違う……。だって……私にとって、クロはそんなんじゃ……。


心の中でひとり必死に否定を続けていた私は、不意に頭に温もりを感じて顔を上げた。


「ほら、千帆。そんな顔してないで、明日ふたりとどんな話をするか考えよう?」


笑顔とともに頭をポンポンと撫でられ、痛みを感じていたはずの胸の奥がキュウッと高鳴って……。


いつからか心の中に芽生えていたその想いがクロへの恋心であることを、もう認めてしまうしかなかった。