心を刺激し続けるチクチクとした痛みが、少しずつ鋭く重いものへと変わっていく。


正直、連絡先くらい普通に交換できると思っていて、そんな勘違いをして当たり前のように口にしたことが恥ずかしくなった。


他の人には自分から切り出せなくてもクロにはちゃんと言えて、私にとってそれはたしかに今までとは違う言動だったはずなのに……。


ただ空気を読めていなかっただけなのかもしれないと思い、その気のない彼を前にして心にモヤモヤとした黒いものが落とされたような気がした。


私とクロとの距離はもう少し近いものかと思っていたけど、そんな風に感じていたのは私だけで、彼にとってはあくまで期間限定の関係に過ぎないのだと思い知る。


連絡先どころかクロの本名すら知らない私は、彼のことは片手ほどの情報しか知らないという事実にまた胸の奥が痛んで、平気な振りをしたいのに眉間に皺を刻んでしまう。


なんで、がっかりしてるんだろ……。別にいいじゃん、クロの連絡先なんて。今日は、堀田さんと中野さんと少しだけ仲良くなれたんだから。


心の中ではそんな風に呟いても気持ちは晴れなくて、この時初めて、自分が傷ついていることに気づいた。


そして同時に、信じ難い感情が芽生えていたことも……。