「本当……?」


「本当だって! 私も中ちゃんも、数学苦手だもん!」


「うん。正直、先生よりもわかりやすかったかも。って、大きな声では言えないけど」


興奮しながら話す堀田さんの隣で、中野さんが舌を小さく出して笑った。


「よかった……」


安堵の言葉とともに自然と頰が綻んで、息を大きく吐きながら胸を撫で下ろす。


すると、中野さんが瞳を丸くした。


「松浦さんが笑ってるところ、初めて見たかも」


「あはは! 私もこの間それ言った! 全然普通に笑えるじゃん、って思うよね?」


「うん、笑わない人なのかと思ってた。……あっ、ごめん」


「ううん、そう思われても仕方ないの。私、誰とも関わろうとしてなかったから」


素直に零したあとで、ふたりを困らせてしまうようなことを口走ったと気づいてバッとしたけど……。


「私は、今の松浦さんの方がいいと思う。ねっ、中ちゃん?」


堀田さんは笑顔でそんな風に言うと、中野さんも大きく頷いた。


「うん。笑えるんだし、勉強教えるの上手いんだし、ひとりでいるなんて勿体ないよ」


「そうだよ。よかったらまた教えて。あっ! 夏休みの宿題が出たら、三人で一緒にしない?」


笑顔で提案した堀田さんに、きょとんとした。