数学の教科書を開き、そこに書かれている公式を引用して自分の問題用紙にシャーペンを走らせていくと、五分もしないうちに問題が解けた。


過去の失敗を踏まえるように丁寧に言葉を並べていく私の説明に、ふたりは何度か相槌を打ちながら真剣に聞き入ってくれていたけど……。


「やば……」


シャーペンを置いた堀田さんが、数字や記号が踊っているルーズリーフをまじまじと見ながら呟いた。


彼女の言葉にドキッとしたのは、なにかまずいことを口にしてしまったのかと不安になったから。


話し方には気をつけていたつもりだけど、ぶっきらぼうな口調になっていたのだろうか。


それとも、無意識のうちに嫌な気持ちにさせてしまったのだろうか。


グルグルと巡る不安に押し潰されそうになっていると、堀田さんがバッと顔を上げて満面に笑みを浮かべた。


「やばいよ、松浦さん! 私、一回の説明で数学が理解できたの、中一以来なんだけど!」


「えっ?」


「すっごくわかりやすかった! ねっ、中ちゃん!?」


興奮気味な堀田さんに、中野さんも最初とは正反対の明るい笑顔で頷いた。


「うん、本当にわかりやすかったよ! 私も理解できたもん」


ふたりの言葉が信じられなくて、瞳を小さく見開いた。