両親とは特別仲がいいとは言えないけど、関係は上手くいっていると思う。


ガミガミと叱られた記憶はなく、過保護でも放任でもない環境は居心地が好くて、喧嘩や反抗をしたことはほとんどない。


勉強についても、両親ともに『勉強しなさい』としつこく言ってきたことは一度もなくて、それを聞いたとしてもサラリと告げられる程度だった。


小学生の時に守るように言われた約束事は、“遊びに行く前に宿題を済ませること”というものだけ。


そんな状態でも勉強に取り組む習慣が付いたのは、大人になっても努力を怠らずに勉強し、知識を取り入れようとする姿勢を見せ続けてくれている両親のおかげだろう。


父は薬学の研究職を、母は通訳者をしていて、ふたりとも本や新聞をよく読んでいる。


研究職という職業柄なのか、興味を持つと納得がいくまで調べ、分厚い文献を読み始めると止まらない父。


英語力はもちろん、日本語力も重要だからと、より高い表現力を身につけるために家では本や新聞をほとんど手離さない母。


ふたりとも職種は全然違うけど、知識を取り入れようとする姿勢はよく似ている。


そして、そんな後ろ姿を見て育った私は、気がつくと両親から影響を受けるように勉強をする習慣が付いていた──。