「千帆にとって、ツキはいい奴なんだな」


「そうだよ。でもね、最初からそうだったわけじゃないんだ」


ようやく口を開いたクロに眉を寄せて微笑むと、彼はまた黙ってしまった。


その態度をツキのことをまだ話してもいいのだと受け取り、ツキと出会った時のことを語ることにした。


「ツキは、三年前にこの公園に捨てられてたのを見つけて拾ったんだ。怪我しててすごく弱ってるのに、警戒心を剥き出して必死に威嚇してきて……病院で診てもらってから一生懸命看病したんだけど、最初は何度も引っ掻かれたんだよ」


苦笑した私につられたのか、クロまでどこか悲しそうな笑みを零したから調子が狂いそうになったけど、時間が惜しくてすぐに続けた。


「もともとは飼い猫だったのに捨てられたみたいで、そのせいで人をすごく警戒してたんだ」


あの頃のツキはまるで私みたいだと思っていることは、口に出さなかった。


そんなことを言いたくなかったのはもちろん、ツキと自分自身を一緒にするのはなんだか申し訳なかったのだ。


「名前を付けたけど、きっとツキにはそれまで呼んでもらってた名前があったんだろうし、どんなに一生懸命看病したって懐いてくれないかもしれないって思ってた。でもね……」


だって……。