「すごく健気で、甘えん坊なところ。猫って気まぐれだって言うでしょ? でも、ツキは全然そんなことなくて、いつも私の傍にいるの」


ツキのことを考えるだけで嬉しくなって、ごく自然と口元が綻んでいく。


「私が出掛ける時には見送ってくれて、帰ると出迎えてくれるんだ。あと、落ち込んでる時には片時も離れようとしなくて、お風呂にまで付いて来たり……」


今もきっと、ツキは私の帰宅を待っているに違いない。


「それから、ご飯の時も先に準備してあげてるのに、私が食べ始める時まで待ってるんだよ」


そう思うと早く帰りたくなったけど、ツキのことを話す私の口は止まらなかった。


「特に躾をしたわけじゃなくて、全部ツキが自然とするようになったことばかりなの」


クロは、そんな私の話に黙って耳を傾けていて、その顔にはとても優しい笑みが浮かんでいた。


てっきり、ツキのことを否定的な目で見ているのだとばかり思っていたのに、彼の表情からはそんな雰囲気は一切感じられない。


ツキのことを話す機会に恵まれて嬉しかった私は、クロが決めた時間までにツキの魅力を語るのが無理だとわかっていて、彼と過ごしたいわけではないのにニ十一時になるまでの残り十分しか話せないのは残念だと思った。