「本当にここがサルワの研究所なの?」

「ああ。この地下に雫に関する情報があるはずだ」
 
アレスは扉に向かって歩き出した。

その背中を追うように私はアレスの後ろを着いていった。古い木造の扉をゆっくりと前に押したアレスが中に入る。

案の定、灯りがないせいで部屋の中は真っ暗で何も見えなかった。

「何も見えないわね」
 
テトがそう言うとアレスは明かりの魔法を使って辺りを照らした。

「これで大丈夫だろ?」
 
そう言って私に確認を取ったアレスは奥の部屋へと向かう。

「ま、待ってよ!」
 
私も慌ててアレスの後を追った。

♢ ♢ ♢

長い廊下を歩いて行くとある一つの扉の前でアレスは足を止めた。

扉の上には分かりやすく【書斎】と書かれたプレートが貼ってあった。

「ここだ」
 
アレスはそう言うと書斎部屋の扉を奥に押し中へと入る。

「まずはここを調べるぞ」

「どうしてここなの?」
 
ここに来た時アレスは迷わず、真っ先にこの部屋に来た。

「私と来る前に自分だけ先にここに来たの?」

「出来るだけ捜査する部屋は、絞っておきたかったからな」
 
それはやっぱり探偵としてそう教わったせいなのだろうか?
 
アレスは既にこの部屋の中で目星をつけていたのか、大きな本棚を調べるとある一冊の本を奥に軽く押した。

「隠し扉も見つけ済みなのね。さすが探偵さん」

「まあな」
 
これは流石だと言わざるを得ない。私だけじゃ見つけるのに時間が掛かっていたと思う。
 
扉を隠すカラクリが動いたのか、大きな本棚は左へと大きくずれ一つの扉が姿を現した。