俺とは違って……な。
 
【天才】、【秀才】という言葉は俺なんかよりも、ソフィアの方に向けられるべき言葉だ。

♢ ♢ ♢

ソフィアが記録の魔法を習得しようとしてから一時間が経過した。

「覚えたよ」

「さすが早いな」
 
手帳を閉じたソフィアは立ち上がると俺の前に立つ。

「あの図書室から見つかった魔法だから高度な魔法かと思ったけど、そこまでじゃなかっただけよ。これ返すね」
 
ソフィアから手帳を受け取る。

「どうやって使うのかしら?」

ソフィアの肩の上にテトが飛び乗る。

「紙に魔法陣を描いて一枚ずつ持つの」

「それだけで良いのか?」

「うん。それだけ」
 
ソフィアがそう言うなら大丈夫なんだろうけど本当にそれだけで良いのか?

「サルワたちは紙を持つより魔法陣を刻んだ何かを持ってると考えた方がいいと思う」

「どうしてそう思うんだ?」
 
ソフィアは呆れたように俺を見てくると言う。

「無くしたらどうするのよ?」

「そ……それもそうだな」
 
クスクスと笑うテトを横目で見ながら俺はそっぽを向いた。
 
確かになくしたら洒落にならないな……。

★ ★ ★

 
夜になりアレスと私は研究所に向かっていた。

研究所は街から離れた深い森の中にあった。

「ここが……サルワが雫(ロゼ)の研究をしていた場所」
 
辺りに街灯はなく夜空は曇っているせいで月の光も差し込まない。

そのおかげで目の前に見えるのは研究所ではなく幽霊屋敷に思えてきた。