「入室許可は貰っているけど、本は持ち出せないからメモってきた」
 
てことは私に何も言わず先にあの図書室に入ったってこと?!
 
私の気に入らない表情に気がついたアレスは苦笑しながら言葉を続ける。

「何も言わないで動いていたのは悪かったよ。病み上がりのお前に、無理させたくなかったんだ」

「……分かってるよ」
 
そんな理由だとは思っていた。

でも一言くらい何か言ってくれても。

「俺が見つけたのは、記録(レコード)という魔法だ」

「記録?」
 
初めて聞いた魔法だった。名前からして記憶に関する魔法なんだろうけど。

「記録の魔法は自分の記憶を保存出来る。だから忘却の山に入っても、記憶が消えることはないんだ」
 
その魔法が本当に使えるなら、あの忘却の山にいる確率はぐっと上がる。

「サルワたちがその魔法を使えたとしても、その魔法を使えない私たちがあそこに行くには無理があるよ」
 
行ったところで直ぐに記憶を消されて帰る羽目になってしまう。

「だから奴らの魔法を俺たちも使うんだよ」

「……その魔法を私に習得しろって言うの?」

「まあ、そんなところだ」
 
何て無茶なことを言ってくるのだろうか。初級魔法や中級魔法ならば、数時間もあれば習得出来る。

でもあの図書室からアレスが見つけてきた魔法だ。記憶の保存が出来るってところで、高度な魔法だということは明白だ。