「事件に巻き込まれたばかりの娘を、外に出したくないのは分かる。でもそれはお前を連れて行かない理由にはならない」

「えっ?」

アレスは私に手を差し出す。

「お前は俺の力になりたい言ってくれた。だから俺のためにこの手を取ってくれ」

「アレス……」

「残された時間は少ない。だから母さんを……みんなを救うためにも、お前の力を貸してくれ」

「……っ」

アレスの言葉が心から嬉しかった。やっとアレスの力になる事が出来るんだと思うと体が震えた。

ようやくアレスの隣に立てた気がした。

「アレス……お母さんの方は大丈夫なの?」

「今のところは……って言いたいけど、マナの毒が全身を回り始めた」

「っ!」

アレスは唇を噛むと言う。

「だから俺と一緒に来てくれ、ソフィア」

「うん。そのためにこの手を取ったんだから」

私の言葉にアレスは優しく微笑んだ。

「それで教団のアジトの場所は特定出来たのかしら?」

私たちの顔を交互に見ていたテトに問いかける。

「ああ」

テトの質問にアレスは即答で返した。

「案外早かったわね。もっと時間が掛かるかと思っていたわ」

「サルワの事を知っている人物から聞いたんだ」

「サルワの知っている人物?」

アレスは持っていた封筒からこの世界を記した地図を取り出した。

「前にこの目で見た時、あいつらは扉で移動している事が分かった」

「扉?」

「霧の魔法を使っていたのは、扉を使って移動しているのを分からせないため」

「だから突然、目の前に現れたように見えたんだ」

私の言葉に頷いたアレスは言葉を続ける。