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次の日――

「テトいつまで寝てるの? もう朝だよ」

「ソフィアが早いのよ。なだ日が昇ったばかりじゃない……」

「いつもの朝練だよ。ほら早く行くよ」

「はいはい」

テトは寝ぼけながら私の肩の上に飛び乗った。

私は毎朝早く起きては学校の中庭付近をいつも走っている。

走り終わった後は魔法の詠唱の暗記と、魔力を高めるための訓練とほうきに乗る練習をしている。

もちろんほうきがなくても普通に飛ぶことは出来る。

でもこの魔法はまだ習っていないから校内で使うのは控えている。

「よしっ」

運動の出来る服装に着替え外に出た私はそのまま走り出した。

運動着の色は薄黄色で統一され、白のラインは朝日に照らされるとキラキラと輝いて見える。

運動着の色はそれぞれのクラスごとで別れていて、私は黄雫の魔法使いだから薄黄色の運動着を着ることになる。

しかし私は運動着という物が好きではない。

でもこの服以外に運動が出来る服がないんだ。

もちろん“服を買わない”というわけではない。

服はお父様が用意してくれるけど、全てお父様好みの服だから悪いと思いつつも着る気になれないのだ。

「はあ……はあ……」

息を整えながら中庭の方へと走って行く。

「ソフィア」

「なに? テト」

「エアの女神像の前に誰か居るわよ」

「えっ?」

テトを横目で見た私はそのままエアの女神像へと目を向ける。

「誰だろう? こんな朝早くにあそこに居るなんて」

「それはソフィアも同じでしょ?」

「これは私の日課だよ」

辺りは霧が立ち込めているため後ろ姿しか見えなかった。

でもあの後ろ姿には見覚えがあるような気がした。

「女神像なんか見上げて何しているんだろ?」

「ただ見ているだけでしょ? そんなことより早く行かないと時間がなくなるわよ」

「……そうだね」

少し気になったけどテトの言う通り時間がなくなってしまう。

朝練の後は朝食の時間になるから急がないといけない。

最後にエアの女神像を見上げている人の後ろ姿を見つめ、私は西棟に向かって走り出した。