「それに私を狙って襲ってきた連中……あの人たちを全員殺すのに一分も掛からなかったかな」

簡単にそう言ってのけた彼女の姿を見て、どうしてそんなことが言えるのだろうと思った。

これが……魔人族なのか? 人を殺すことを何とも思わないて非道の一族なのか?

でも俺が知っているソフィアはそんな奴じゃない。泣き虫で、意地っ張りで、努力家で、男勝りなところもあるけど、誰よりも人のために必死に行動することが出来る。

それが俺の知っているソフィアだ。

「……今直ぐソフィアの中に戻ってくれ」

「どうして?」

腕を掴んできた彼女の手を払いのける。そして睨みつけるように彼女を見下ろす。

「良いから……言うことを聞いてくれ!」

俺の顔をじっと見上げてきた彼女は、俺から少し離れると小さく頷く。

「今のアレス機嫌悪そうだからそうするね」

その言葉を最後に彼女は目を瞑った。

髪の色が元の翡翠色に戻ったと同時に、体から力が抜けたソフィアの体が前へと倒れ込む。

「ソフィア!」

床にぶつかるギリギリのところで体を支えた時、さっきよりも熱が上がっている事に気がつく。

「熱が上がってる?!」

さっき彼女が表に出てきたせいなのか? でもたった数分で熱が上がるものなのか?

医療魔法をかけようとソフィアの体に手をかざす。

「そんなことしても無駄よ」

肩から下りた手とがそう言う。

「無駄ってどういう意味だ?!」

「魔人族に医療魔法は効かないのよ」

その言葉に俺は目を丸くする。

医療魔法が効かないって……。