今の口振りからして、テトは事件の真相を知っているように思えた。

俺が死ぬところを見ていたと言ったテトは、あの場所に居合わせていたんだ。もしかしたら俺たちを襲った連中が、誰に殺されたのかも知っているかもしれない。

「親父の捜査資料を読んだら、俺たちを襲った連中は全員無残な姿で殺されていたと書いてあった。それについてお前は何か知っているんだろ?」

「ええ、もちろん知っているわよ」

結局あの事件は犯人が見つからないまま、捜査は打ち切りとなってしまった。でもテトの話を聞くことで、犯人が誰なのか分かるかもしれない。

「奴らの狙いはソフィアだったのよ」

「っ?! まさかあいつらは……ソフィアが魔人族だって知っていたのか?!」

俺の言葉に頷いたテトは更に言葉を続ける。

「どういう経緯で、ソフィアが魔人族だって言う情報を手に入れたのかは知らないけど、あの連中を無残な姿で殺害したのは、紛れもない魔人化したソフィアなのよ」

「……っ」

その言葉を聞いて俺は、寝息を立てながら眠っているソフィアの横顔を見つめた。

「アフィアは二人を庇って死んだ。そしてあなたもソフィアを庇って死んでしまった。それを目の当たりにした時に魔人族の血が覚醒したのよ」

記憶の中に残るソフィアの泣き叫ぶ声は、俺の中で色濃く残っていた。俺たちが死んだことによって魔人族の血が覚醒し、きっと無意識の内に全員殺してしまったんだ。

ソフィアが人を殺すことが出来ないってこと、俺が一番よく知っている。

「その時の記憶は覚えていない。ソフィアを庇ったと言うなら、その記憶があっても良いはずだけど……」

何で俺はその時のことを覚えていないんだ? 覚えていても良いはずなのに……。

そう疑問に思った時、テトがソフィアの方を見て言う。

「“魔人の彼女”が記憶を消したのよ」

「魔人の彼女?」

その言葉に俺は首を傾げた。