「あれが魔人化したソフィアだったのか……」

でもあの時は俺の姿を見ると軽く微笑んだだけで、直ぐに元のソフィアに戻ってしまった。

「ソフィアが魔人化した時、あなたもその場に居たわよ」

「俺も?!」

そんな記憶に覚えはなかった。魔人化したソフィアを見たのは、あの時が初めてだったはずだ。

「覚えていないのは無理もないわよ。だってあなたは……」

テトは眠そうにあくびをすると言う。

「“一度死んでいるんだから”」

「…………は?」

テトの言葉に体が固まった。

今……こいつなんて言った? 俺が死んでるとか言わなかったか?

「俺が……死んでるって? 冗談はよせよ」

「冗談じゃないわよ。私はこの目でちゃんと見たんだから」

テトが嘘を言っているように見えなかった俺は額に手を当てる。

「どうしてって顔をしているわね。あなたはソフィアに蘇生されたのよ」

「蘇生……された?」

魔人化にそんな力があるのか?

俺は自分の手を見る。

「俺は一度死んでいて、ソフィアによって蘇生された……」

だから生きているってことで良いだよな? でも納得いかない部分が多すぎる。

「そんな魔法があれば……もっと多くの人の命を救えるはずだ」

「だから魔人族は特殊な一族なのよ。人間族や他の種族が出来ないことを平気でやってのけるんだから」

じゃあソフィアが高度な魔法を扱えるのは、それが関係したりするのか?

「そんな貴重な一族を昔の人間族は滅ぼしちゃったけどね」

だったらなぜ魔人族は人間族に滅ぼされたんだ? そんな特殊な力を持った一族が、意図も簡単に人間族に滅ぼされるものなのか?

「話しは戻すけど、ソフィアのお母様のアフィアのことは知っているわね?」

「あ、ああ。幼い頃にお世話になった人だから」

「どうして亡くなったか知ってる?」

「記憶が曖昧なところがあるけど、俺たちを庇って亡くなったって聞いてる」

「詳しく聞かされていないのね」

テトは目を細めて言う。