「言っておくけど、俺があの図書室に入る理由は事件を解決に導く為と、ある魔法書を見つけ出す為だ」

私の考えが読まれたのか呆れた顔を浮かべたアレスが見下ろしてくる。

さすがにまずいと思った私は慌てて言う。

「そ、それくらい言われなくても分かってるよ!」

アレスの言う通り私があの図書室に入りたい理由と、アレスが入りたい理由は全く違う。

私があの図書室に拘っているのは、もっとたくさんの魔法を習得したいってものある。でも一番の理由は、アレスの力に役立つための魔法を習得したいことだ。

だからこれは強くなれるチャンスかもしれない。

でも今はアレスのお母様のために雫を抜かれた人たちのためにも、あいつらを捕まえるために動かないといけないんだ。

「……はあ」

覚悟を決めて大きく息を吐きアレスを見つめて応える。

「助手やってあげるよ」

私の返事を聞いたアレスはニヤリと笑うと言う。

「よく言った」

アレスは胸ポケットからある紙を一枚取り出した。その胸ポケットには、いったいどれだけの物が入っているのだろう?

「ねえ一つ聞いてもいい?」

「ん? 何だ?」

「そのポケット……手帳や紙以外に何が入ってるの?」

「えっ? これか?」

アレスはさっき紙を取り出した胸ポケットに目を落とす。

「いろいろと出てくるから、空間魔法でも使ってるの?」

「いや、別に使ってないけど」

「……あ、そうなの」

空間魔法じゃないなら何であれだけの物が入ってるの?!

「ただの助手になるだけなのに、契約書なんて必要なのね」

テトが話を戻すように目の前に置かれた“契約書”とでかでかと書かれている紙をじっくりと見下ろした。

「一応探偵の助手ってことになるからな、証明書として魔法協会に提出しないといけないんだ」

アレスは胸ポケットからペンを取り出した、ベッドの横のサイドテーブルの上に紙とペンを置いた。