「いつからこの子はこんな男みたいな口調で、こんなことを言い始めたのかしら? 小さくて素直で可愛かったソフィアがどこへ行ったのやら」

「昔は昔でしょ! 今の私は昔とは違うの!」

そんな小さい頃の私を求められても困る……。

テトは私が小さい頃からずっと側に居てくれた。

そのせいなのかこうしてたまに、お母さんみたいなことを言い始める。

心配してくれるのは嬉しいけど、私に友達なんて必要ない。

居ても邪魔になるだけだ。

「そうよね〜……だって今じゃ“絶対零度の女”なんて呼ばれているし、せっかく綺麗な容姿をしているのに、そのせいで男たちからの評価は低いことで――」

「テト!」

「ふっ……冗談よ?」

「どうだか」

テトの言う“絶対零度の女”という名前は、男たちが私を呼ぶ時の名称みたいなものだ。

いつ頃からそう呼ばれるようになったのかは分からないけど、“男たちを鋭く睨みつける目つき”と言う理由から、“絶対零度の女”と呼ばれるようになったらしい。

テトからその話を聞いた時は腸が煮えくり返そうになった。

犯人は一体誰なのか、誰がそんなことを言い始めたのか、見つけたら半殺しにしてやるつもりでいた。

しかし犯人は見つからず、こんな無駄な事に時間を費やすなら勉強している方がましだ、という考えに行き着き気に留めるのをやめた。

「私はこれから勉強するから先に寝てていいよ」

「そうさせてもらうわね。おやすみ、ソフィア」

「おやすみテト」

奥の部屋へと消えて行ったテトの後ろ姿を見送り、私は魔法書へと向き直った。

「やっぱりこれだけの魔法書があっても足りない……」

この部屋にある魔法書の全ては熟読しているためほぼ暗記済みだ。

だから魔法書を開いてもただ復習するだけになってしまう。

もっとたくさんの魔法やその技術を得るためには、あの図書室に行くしかない。

「やっぱり“禁断の図書室”に侵入するしかないのかな……」

そう呟いた私は窓の外を見つめた。