「俺が知っている情報って、いったい何のことだ?」

案の定、アレスは誤魔化すようにそう淡々と言う。その姿を見た私はテトに目を向ける。

「はいはい」

テトは“やれやれ”と言いながら、ブローチからアレスが落とした報告書を取り出した。

「そ、それは!」

その報告書を見たアレスの顔が一気に青ざめた。

私は更に追い打ちを掛けるようにテトから報告書を受け取りアレスの前に堂々と掲げる。

「これ全部読んだよ! これを見られてまだ何のことだって言えるの?!」

「うっ……」

私たちの顔を交互に見たアレスはやがて深く息を吐くと口を開いた。

「機密情報扱いされているから、話すわけにもいかないんだけど……」

そう言いながら胸ポケットから手帳を取り出したアレスは真剣な顔つきになる。

「この話を聞いたら、お前たちもこの事件に巻き込まれることになる。それでも良いのか?」

「もう巻き込まれてるよ」

今更そんなこと聞かれるまでもない。もう雫を狙われた時点で私は、事件に巻き込まれているんだから。

「……分かった。そこまで言うなら話してやる。でもこれから話すことは誰にも言うなよ?」

「うん」

頷いた私の姿を確認したアレスは手帳を開く。

「こんなところで話しても良いのかしら? 他の患者さんたちが聞いて居るかもしれないのに」

「それは安心しろ。ソフィアの病室には俺たち以外いないから」

「そうなの?」

アレスは私に見えるようにベッドを囲んでいたカーテンを全て開いた。

アレスの言う通り部屋には私たち以外の人は見当たらない。どうやら私たちは個室に居るようだ。

「理事長の娘ってことで個室に移されたんだ。あの人の許可がない人はここを通すことも許されていない」

「徹底してるのね」

お父様は何を考えているんだろう? こんな私を隔離するような真似をするなんて。

「お前のことが心配だったんだろうな」

「私を?」

「親が子の心配をするのは当たり前だろ」

アレスの言葉を聞いて昔の記憶が脳裏を過った。