アレスは真っ直ぐ私を見てくると問うた。

「ヴェルト・マギーアって知っているか?」

「ヴェルト・マギーア?」

その言葉を聞いたとき酷い頭痛が私を襲った。

「っ!」

あまりの痛さに私は頭を抱える。

「ソフィア?! 大丈夫か?」

「う、うん……」

今の頭痛はなに?

“ヴェルト・マギーア”と言う言葉を聞いた時、何かを抑え込むように頭痛が走った。私はその言葉を知っている気がした。今日初めて聞いたはずのその言葉を、私はどこかで一度聞いたことがある。

「それは“世界の魔法”よ」

私の代わりにテトがそう応えた。

「よく知ってるな。誰から聞いたんだ?」

「ある書物を読んだことがあってね、そこに書いてあったのよ」

その“ある書物”というのが少し気になるけど、私たちの知らないことまで知っているテトはやっぱり流石だと思った。

「その世界の魔法ってのは何だ?」

「世界の魔法――ヴェルト・マギーアは、“世界を創り出す魔法”とも呼ばれているの。と言っても、そんな魔法が実在するのかは不明だけどね」

「世界を創り出す魔法か……ありがとう助かったよ」

「どういたしまして」

何でアレスはヴェルト・マギーアなんていう物騒な魔法について調べているんだろう? 今回の事件に関係があったりするのだろうか?

そんなことを考えながら私はベッドから出ようとする。

「そ、そんな体でどこに行ことしているんだ?!」

「寮に戻って魔法書を取りに行ってくる」

ゆっくりと足を床に付け立ち上がろうとする。しかし体が熱で侵されているせいで、たった瞬間に目の前が大きく揺れた。

「っ!」

体が前に倒れ込み頭を打つと思ったときアレスに体を支えられる。

「無茶はするな。そんな状態で寮まで戻れるはずないだろ?」

「しばらく学校は休校になるみたいだし、その間に勉強が出来なくなるのは辛いの……」

私はアレスの体を軽く後ろに押した。