「何でもないわよ。それより学校の方だけど、思ったより被害は大きかったみたいよ。小竜やワイバーンたちが容赦なく暴れてくれたおかげでね」

「そっか……」

結局サルワはどうやって、あれだけの数の小竜やワイバーンを召喚したんだろう? 召喚魔法を使うのには、魔法陣を描いて場と場を繋げる必要がある。

魔法陣を描いて繋げることはサルワ以外の人でも簡単に出来ることだ。一つ気になることがあるとすれば、いったい誰が学校の敷地内に魔法陣を描いたかだ。

「だから授業はしばらくお休みってことになったわよ」

じゃあ来月にあった期末テストも先送りになりそうだ。

そう思ったときベッドを囲んでいたカーテンが勢い良く横に引かれた。その拍子に今まで遮られていた朝日が差し込んで来て、私は思わず目を瞑ってしまった。

「会話が聞こえたからひょっとしてと思ったけど、やっぱり起きてたんだな」

閉じた目を開くとそこには安心した表情を浮かべたアレスが立っていた。

「アレス……」

アレスは私の側に来ると額に手を当てる。

「う〜ん。やっぱりまだ熱はあるな」

「熱?」

そう言えば何で私の体はこんなにも熱いのだろう?

「私は風邪でも引いたの?」

今まで風邪なんて引いたことがなかったのに。

「風邪に似ている症状だけどちょっと違う。昨日のことは覚えているか?」

「昨日?」

何で唐突に昨日のことを覚えているか、なんて聞いてくるのだろう? ……もしかして。

私は自分の胸の手を当てて言う。

「私は雫を抜かれたの?」

「覚えていないのか?」

アレスの言葉に小さく頷く。

思い出そうとしても熱があるせいで頭が働かなかった。

「そうか……でも安心しろ。お前の雫は抜かれていない。無理に思い出す必要もないからな」

アレスは近くにあった椅子に座ると言う。

「お前に一つ聞きたいことがあるんだ」

「なに?」