「まだだ」

「何故ですか? 奴らの事を新聞に載せることで、対策だって練ることが出来るんですよ!」

カイトさんは近くにあった椅子に座ると俺を見て言う。

「新聞に大きく記事を掲載したとしたら、奴らの警戒心を強く高めてしまうことになる。なんせ奴らは闇魔法を使う連中だ。奴らの名前を語った偽物も出て来るかもしれないんだぞ?」

「それは……」

確かに奴らの警戒心を高めてしまったら逮捕するのに時間が掛かる。偽物なんて出てきたら何が偽物で何が正しいのかで、更に時間をかけて捜査することになってしまう。

「またそんな凶悪な連中を捕まえることが出来ない、警察への評判が下がるだけだ」

「上の人たちからしたら、それが一番嫌ですもんね」

俺の言葉にカイトさんは軽く頷く。

上の人たちからしたら事件解決なんて後回しだ。事件より警察の評判を下げないように、あの人たちは常に考えている。街の人たちがどうなろうと知ったことではないんだ。

「ま、そういうことだ。堂々と新聞に載る時はあいつらを逮捕した時だろうな」

「そうですか……」

こればっかりはカイトさんでも何も出来そうにないか。

「その前にお前は、山積みになった報告をとっとと片付けるんだな」

「そうします。カイトさんはこれから帰るんですか?」

「いや、今夜も泊まって行くつもりだ」

そう言ったカイトさんは大きく欠伸をした。

「時間になったら起こしましょうか?」

「そうしてくれると助かる」

カイトさんは椅子から立ち上がると、重い瞼をこすりながら奥の部屋へと消えて行った。

そんなカイトさんの後ろ姿を見届けた俺は、山積みになっている報告書に向き直った。