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西棟近くまで来た時、寮のある付近で強い魔力の波動を感じた。

「っ……!」

今まで感じたことのない魔力だった。闇魔法とは違い禍々しい魔力というわけではない。禍々しいと言うより憎悪といった性質に近かった。

誰かを深く憎んでいる、そういった感情が伝わってくる魔力だった。
 
俺は覚悟を決めて魔力を感じた場所へと走った。

「こ、これは……」

そこには、激しく戦った後の痕跡が深く刻まれていた。寮や剣術場、体育館からは煙が上がっているが、さっきまで学校の頭上を飛んでいたはずの、小竜やワイバーンの姿は見当たらない。

「いったい何が?」

辺りを見渡した時、煙の中に人影があるのが見えた。強い魔力を感じたのはそこからだった。

「誰だ?」

一人の影が俺の存在に気がつくと、こちらに体を向けて歩いて来る。煙が晴れ月の光がその人物を照らしたとき俺は目を見開いた。

「ソ、フィア……?」

月の光に照らされキラキラ輝く白銀の髪の下からは、血色の染まった真っ赤な瞳が向けられた。

真っ直ぐ向けられるその瞳を見て胸の辺りがざわつくのを感じたと同時に、ソフィアのその姿を心から美しいと俺はそう思ったんだ。