私はテトが居た場所へと目を移す。しかしそこには居るはずのテトの姿はなく、辺りを見渡しても姿は見当たらなかった。

ミッシェルが来たから身を隠したんだ……。

テトは見ず知らずの人にはあまり自分の姿を見せない。本人曰く面倒くさいかららしい。

知らない人から使い魔として接せられるより、“ただの黒猫”として接してもらえる方が楽だと前に言っていた。

だからテトは自分が気に入った人、もしくは私と深い関わりがある人以外の人前では、ただの黒猫として生活している。

「ソフィア!」

ミッシェルの声で我に返る。前を見ると一匹の小竜が私たち目掛けて飛んで来るのが見えた。

その姿を確認した私は右手を上げて前にかざす。

「雷の精霊よ、その力を集結させ目の前の者の体を穿て、雷の槍(サンダーランス)!」

雷の槍をまともに受けた小竜の体に電撃が走り、小竜は苦しい声を上げながらそのまま落下した。

「凄い……凄いよソフィア!」

「これくらい、出来て当然だよ」

嬉しそうに微笑んでいるミッシェルを見て、少し照れながら応える。

今までたくさんの人に褒められてきたけど、その言葉はほとんど心に響くことはなかった。

でもどうしてだろう。ミッシェルの言葉は真っ直ぐ私の心に響いた。

だから少し照れくさくなったのだ。

「しかし君は、それ以上の魔法を使えるんだろう?」

「っ!」

「まず先に邪魔なその子から雫を頂こう!」

背後から声が聞こえた私はミッシェルの体を横に強く押した。

「きゃっ?!」

突き飛ばした後でサルワに両手をかざそうとした時、サルワの手が私の首へと伸びてきた。

「ぐっ!」

そのまま首を掴まれ体を持ち上げられる。

「そ、ソフィア!」

「に、げて……ミッシェル……!」

サルワの手首を掴み、お腹に一発蹴りを入れる。

「くっ!」

苦しい表情を浮かべたサルワは、私から手を離すとお腹を抱えたまま後ろへと下がった。