私の体はそのままズルズルと、サルワの元へ引っ張られてしまう。

「さて、君の雫を頂こうか」

ニヤリと笑ったサルワが私に手を伸ばしてくる。

このままでは本当に雫が抜かれてしまう。体は鎖が巻き付いているせいで動かすことも出来ない。あの瞳のせいで自由も奪われているから魔法も使えない。

「もう何も出来ない……」

サルワの手が私の肌に触れる寸前まで伸びてくる。

「……っ」

覚悟を決めて目を閉じた時だった。

「水流の輪(ウォーターリング)!」

「っ!」

聞き覚えのある声と共にサルワの体を水の輪が包み込む。

「な、なにっ!」

サルワの手が離れると、体に巻き付いていた鎖の錠前が外れる。そして外れた鎖は黒い灰となって消えてしまった。

「ソフィアから離れて!」

風に吹かれてなびく紫色の髪は見覚えのあるものだ。私はその人物を見上げて小さく名前を呟いた。

「ミッシェル……」

ミッシェルはサルワの様子を伺いながら私のところまで駆けて来る。しゃがみ込んだミッシェルが体を起こしてくれる。その手からは微かな震えが伝わってきた。

「ミッシェル、どうしてこんなところに居るの?」

「逃げている途中で、ソフィアの姿が見えたから助けに来たの」

そう言いながらミッシェルは私の背中に腕を回す。今度は自分の首の後ろに私の腕を掛けるとゆっくりと一緒に立ち上がった。

「うっ……」

立ち上がった一瞬、目の前が揺らいだ。

「だ、大丈夫ソフィア?」

上級魔法を使い過ぎたせいで立つだけでもやっとだった。ミッシェルが私の体を支えてくれているおかげで、今は倒れずにすんでいるけど。

「私は大丈夫よ」

ミッシェルが助けに来てくれるなんて思ってもいなかった。ずっと冷たく接してきたのに、どうしてミッシェルはこんな私を助けてくれるのだろう?

「早く逃げないと」

「そう、だね」

ミッシェルは私の体を気遣いながら歩き出す。