「君には関係のないことだよ」

男が手を下ろしたのが合図だったのか、小竜やワイバーンたちがそれぞれ私に向かって飛来する。

「どうするの? ソフィア」

「……本当はこの魔法だけは使いたくなかったけど」

今はそんなこと言ってられない。この数の小竜やワイバーンたちを一掃するには、あの魔法が一番てっとり早い。

私は空に向かって両手をかざし詠唱を始める。

「夜空に浮かぶあまねく星々よ、その輝きを一つの星の輝きに変え、数多の流星を降らせよ」

魔法陣が浮かぶ夜空に無数の流れ星が流れ始める。

私は意識を集中させ両手を下ろし力強く叫んだ。

「流星の雨(メテオレイン)!」

呼びかけと共に夜空を流れて行く流星がこちらに角度を変えると、そのまま小竜やワイバーンたちに向かって降り注いだ。

その光景を見ていた男は私に拍手を送るように手を叩く。

「素晴らしい! まさか上級魔法の集合体であり、星々の力を借りることが出来る天体魔法も使えるとは。ますます君の雫が欲しくなったよ」

そう言って男は被っていたフードを下ろす。

「申し遅れました。私の名前はサルワと申します」

深々と頭を下げたサルワが顔を上げる。よく見ると右目には黒い眼帯が付けられていた。

そしてニヤリと笑うとサルワは言う。

「君の雫……頂こう!」

「っ!」

「ソフィア! 今直ぐここから離れるのよ!」

テトの言葉に頷いた私は瞬間転移を使って校門まで飛ぼうとした。

しかし――

「逃さないよ」

サルワは私に手をかざす。

「闇の波動(ダークウェーブ)」

詠唱なしで放たれた闇の波動が黒い渦を巻いてこちらに向かって来る。

「魔法を詠唱なしで!」

「ソフィア!」

私は闇の波動の方へ体の向きを変え両手を前にかざす。

「守りの壁よ、我の盾となり全てを跳ね返せ、反射(リフレクション)!」

防御魔法の反射を使って闇の波動を跳ね返す。