「わ、ワイバーン!?」

ワイバーンは口を大きく開けると、咆哮(ブレス)を撃つための体勢に入った。

「テト!」

「にゃっ?!」

テトを抱き上げ飛行魔法を使った私はその場から離れる。その場を離れたと同時に、私たちが居た場所めがけてワイバーンが咆哮を放つ。

「な、何よあれ!」

「こっちが聞きたいよ!」

テトにそう言いながら飛ぶ体勢を整え、夜空を飛んでいるワイバーンたちを睨みつけた。

間近でワイバーンの咆哮を見てしまった生徒たちは、血相を変えると慌てて学校の校門に向かって走り出す。

「きゃあああ!」

「だ、誰か助けてくれ!」

「こ、殺される!」

生徒たちの声に気がついた数匹のワイバーンたちは、逃げて行く生徒たちに狙いを定めると一斉に飛来し始める。

私はその内の一匹に向かって両手をかざす。

「氷の精霊よ、大気の精霊よ、その力を集結させ、その力を持って目の前の竜の体を穿て、氷の槍!」

幾つもの氷の槍がワイバーンの体に直撃する。

しかしワイバーンは唸り声を上げるだけで、翼に刺さっている氷の槍をばたつかせることで粉々に砕いてしまう。

「だったら!」

今度は空に向かって両手をかざす。

「雷を纏いし神鳥よ、その身をもって目の前の者に雷の一撃を与えよ、雷神鳥(サンダーバード)!」

ぴかぴかと光を放つ雷雲が頭上に集まり、その中から姿を現した雷神鳥は大きく翼をばたつかせると、ワイバーンに向かって飛んで行く。

「いくらワイバーンでも雷には耐えられないでしょ!」

雷神鳥とワイバーンが激しくぶつかる中、雷神鳥は翼を大きく広げると雷の力を集めるように翼に魔力を注いで行く。翼に魔力が溜まった雷神鳥は、ありったけの雷を翼に纏いワイバーンの体を包み込む。

「よしっ!」

苦しそうに吠えながら暴れるワイバーンを逃さないように、雷神鳥は包み込む翼に力を込める。