私たちの体内に宿る魔力の元である雫は、空気中に漂うマナを魔力へと変化させる役割を持っている。

マナはそのままの状態だと、命ある者にとっては毒になってしまう。

だから私たちはマナを魔力に変化させることで毒から逃れることが出来ている。

しかし雫を抜かれてしまった先生は、雫がない状態でマナを吸い続けることになる。

そうなってしまうとマナを魔力へと変化させることが出来ず、マナは有害な物質のまま体内へどんどん溜まって行くことになり、そして最後はマナの毒によって体は蝕まれ死に至ってしまう。

警察はこれをきっかけに事件性があると判断し捜査を開始した。

しかし次々と雫が抜かれていく者たちが増えていく一方で、現場には雫を抜いた犯人の痕跡が一切見つかっていない。

痕跡が一つもない以上、警察でも誰が犯人なのかを突き止めるのには、それなりに時間が掛かってしまう。

だから警察の人たちもあいつに頼んだのだろう。

探偵として最年少であり、数々の難事件を解決してきた私の幼馴染である“アレス”に――

「よく見たらアレスに関する記事まで載っているのね。載せる意味あるのかしら?」

「さあね」

医療魔法や並大抵の人間では習得することが難しいとされる“光魔法”を得意とし、探偵としても学校の生徒としても素晴らしい成績を修めている。

と。新聞にはそう記載されているがそれが何だというのだ。

そんなこと私にだって出来ることだ。

あいつばかりが“出来る存在”じゃない。