それどころか姿すら見当たらない。

「まさかあいつ……」

煙が上がる校舎を見上げた時だった。

「アレス君!」

後ろから声を掛けられて直ぐに後ろを振り返る。

「君は確か……」

そこには見覚えのある子が息を切らして立っていた。

「ミッシェルさんだっけ?」

「そうです!」

ミッシェルさんは俺に駆け寄ると縋るように俺の腕を掴んだ。

「お願いします……ソフィアを助けてください!」

「ソフィアがどうかしたのか!?」

目に涙を浮かべたミッシェルさんは、学校の方へ目を向けるとその先に指をさした。

「あのワイバーンや小竜たちが突然寮の方に現れたの!」

それはおそらく誰かが召喚魔法を使ったせいだろう。でもあれだけのワイバーンや小竜を召喚するとなると、人間一人だけの魔力じゃ補いきれない。

いったいどんな手を使ったんだ?

「フードを被った変な人たちが現れて、先輩たちから何かを抜き取っていったの!」

「っ!」

「私も抜かれそうになって、ソフィアが助けてくれたの……」

俺は学校の方を睨みつけた。

フードを被った連中は教団で間違いない。この学校で強い雫を持っている人から、全て抜き去っていくつもりなのか?!

「ソフィアはどこに居るんだ!」

「西棟の方だよ」

「ありがとう! 君はここから離れるんだ。ここに居たら危ないから」

ミッシェルさんにお礼を言い俺は学校の中に向かって走り出した。

今から行ってあいつらを捕まえることが出来るか分からないけど、ソフィアの雫も狙われかねない。

早く行かないと!

「って! 西棟ってどっちだ?!」

今日見ていた見取り図の記憶を頼りに、俺は中庭に向かって走って行く。そんな俺の姿に気がついたのか、数匹の小竜が俺に向かって飛んできた。

「ちっ!」

俺は右手を小竜たちに向けて構える。