「お母様は行かなくていいの?」

「あの人の買い物に付き合うと、いつ帰れるか分からないもの」

アフィアさんの言う通り両親と理事長の買い物にはとにかく時間が掛かる。お互い好きな物が同じだったり似ていたりするものだから、一つの商品に対してしばらく談笑が始まってしまうんだ。

そんなこともあるから、両親が帰って来るのは夜の遅い時間だったりもする。

「今日も遅くまで帰って来ないかもね」

「まったく……」

頬を膨らませた俺は腕を組んでそっぽを向く。

そんな俺の様子を見ていたソフィアも真似をするように頬を膨らませた。

「仕方ないわ。あなたたち寝ていたんだから」

「な、何で知ってるの?」

「パパを騙せても私の目は誤魔化せないんだから」

アフィアさんは俺たちに顔を近づけると、内緒にするように口元で人差し指を立てた。

「パパには内緒にしておいてあげるわよ」

「あ、ありがとう、アフィアさん!」

勝手に書斎室に入っていたのがバレたら、怒られることは目に見えていた。だから内緒にしてくれると言ったアフィアさんが、俺たちにとっては神様だった。

「お腹空いたでしょ? 何か作ってあげる」

「わ〜い! お母様大好き!」

嬉しそうに笑顔を浮かべたソフィアはアフィアさんに抱きつく。

「ご飯が出来るまでアレス君と遊んでなさい」

「は〜い」

アフィアさんにそう言われ、俺たちは夕ご飯が出来るまで中庭で遊ぶことにした。

「何して遊ぶ?」

「そうだな〜」

中庭に出て何をして遊ぶか話し合って居た時、フードを被った数人の男たちが俺たちに声を掛けてきた。

「そこの君たち、ちょっと良いかな?」

「ん?」

いかにも怪しげな人たちだったから、俺は背後にソフィアを庇って一歩後ろに下がった。