「もしかして彼女の子?」

「うん、ソフィアだよ」

その名前を聞いた母さんは嬉しそうに笑った。

「ふふっ、やっぱり。それでどんな感じの子に成長していたのかしら?」

俺は見て思った通りのことを言葉にしていく。

「すごい美人だったよ。人を引き寄せないオーラを纏っていて、久しぶりに会った俺をいきなりライバルだって言ってきてさ」

「まあそうなの? 彼女にそっくりね」

母さんは何かを思い出したように天井を見上げた。

「アフィアも同じ十六歳の頃は、人を引き寄せないオーラを纏っていたのよ。一匹狼って感じで、会うたび勝手に私をライバル視して来たわ」

ほんとに今のソフィアにそっくりだな……。

そう思い苦笑する。

「もうアフィアが亡くなって……十年になるのね」

「もうそんなに経つのか……」

俺は拳に力を込めて目を閉じた。

♢ ♢ ♢

十年前――

ソフィアがまだ六歳の時、俺は両親に付き添ってよくソフィアの住む屋敷に遊びに来ていた。

俺たちはいつも通り理事長の書斎室に忍び込んで魔法書を読んでいた。そしていつの間にか眠ってしまったのか、目を覚ました時には太陽が西に沈みかけていた。

隣で寝ていたソフィアを慌てて起こし、俺たちは両親の居る部屋へと向かった。でも俺の両親と理事長の姿はなく、アフィアさんだけが部屋で一人紅茶を飲んでいた。

「あれ? 母さんと父さんは?」

「夫に付き添って買い物に行っちゃったよ」

「げっ! また俺だけ置いて行かれた!」

俺の両親は良く理事長と一緒に買物に出かけることが多かった。だからその場に居なかった俺はよく置いて行かれた。

その度にアフィアさんが屋敷の残ってくれていたんだ。