「ニヤニヤしないでよ気持ち悪い」

「仲良くやっているみたいで安心したのよ」

「別に……仲良くなんか」

テトに背を向けて近くにある椅子に座る。

「アレスを探しているんだったら、学校の外にでも出てみたら?」

テトの言葉に眉を寄せた私は言う。

「そろそろ学校の門が閉まる時間になる。生徒は学校の門が閉まるまでに、寮部屋に戻らないといけないんだから、外に探しに行くのは無理だよ」

「それならなぜアレスは、急いで門を通って行ったのかしら?」

「アレスが外に出たって言うの?」

「そうよ。急いでいるように見えたから、警察署にでも行ったのかもね」

じゃあ授業中に書いていたものは、警察宛の報告書か何かということになる。あんな真剣な表情を浮かべながら書いていたんだ。きっと直ぐにでも届けたかったのだろう。

「それに私ったら面白いもの拾っちゃったのよ」

「面白いもの?」

テトはブローチを肉球で軽く触れると、首輪から出てきた折りたたまれた一枚の紙を、私の目の前に差し出した。

「これ……アレスの?」

「いるかしら?」

そう簡単に“いるかしら?” と聞かれても、どう返事をしたら良いのか分からない。

それにこれはアレスのものだ。勝手に中身を見るのは――

「ソフィアが見ないなら私が読み上げるけど?」

「私が目を通すから良い」

私はテトから奪い取るように紙を掴んだ。

こんなところで読み上げられたら、外に居た生徒に聞こえてしまうかもしれない。

「こんなものどこで拾ってきたのよ……」

折りたたまれた紙を広げ順に読んでいく。