「なあ、ソフィア」

「……」

「おい無視はないだろ?」

「うるさい」

別棟へと向かっている最中、教室を出てからアレスはずっと私の後を着いて来ている。

「ここに来たばかりだから、別棟のある場所が分からないんだよ」

「クラスの女の子たちにでも聞けば良いでしょ?」

「それは……聞きづらいっていうか」

その言葉を聞いて歩く足を止めてアレスの方へと振り返る。

「一人の女の子に聞こうとしても、女の子たちの言い争いが始まりそうだし……」

何を言ってるのこの人は……。

呆れた表情を浮かべ胸の前で腕を組んで言う。

「つまりそれは、女の子たちがあなたの質問の返答を誰に求めたのかと言う争い?」

「そうそれ!」

「……くだらない」

そう言い捨てて先を急ぐため歩き出す。

だからって何で私のところに来る必要があるの? 別に女の子たちじゃなくても男の子でも良いでしょ?

「くだらないって……だから待てよ!」

「別棟とかの場所が分からないなら、先生にでも言って見取り図とか貰えば良いでしょ?」

「いや、見取り図はここにあるんだ」

「はあ?!」

私は少し苛つきながら振り返る。

見取り図を持っているなら何でわざわざ私に聞いてくるの!? 最初からそれを見て別棟を目指せば良いはずなのに。

「その冷たい視線やめろよ」

「あなたが馬鹿なこと言うからでしょ? 見取り図があるなら私に着いて来る必要ないじゃん」

「それはちょっと難しいって言うか……見取り図が凄く見づらいと言うか」

「探偵って職をやっておきながら、見取り図の一つもまともに見られないの? それで本当に探偵なんて言えるの?」

「俺を罵る前にまずはこれを見てくれ!」

そう言ってアレスは見取り図を掲げる。目の前に掲げられた見取り図を凝視した私は瞳を丸くした。

これは……見取り図と呼べる物なの?