ふと左隣を見ると、いつの間にか一つの机が用意されていた。

「い、いつの間に？！　朝来た時にはなかったはずだけど」

そのとき前の方から視線を感じた。視線を教卓の方へと向けると、シュー先生が私の事をじっと見ていることに気がついた。

「まさか……あいつ！」

私はシュー先生を睨み返した。

どうやらアレスを私の隣の席に指定したのは、あの先生からの嫌がらせのようだ。昨日私が先生の頼みを断ったのが原因だろうけど、こんなことするなんて大人気ないも程がある！

「何でこうなるかな？」

アレスは頭をかきながら私の方へと歩いて来る。そんなアレスの姿を肉食系女子たちは静かに見守っていた。

「おはようソフィア。昨日ぶりだな」

「……おはよう」

アレスにそう言い放ち目を逸らす。挨拶が返されて嬉しかったのか、アレスはニコニコしながら隣の席に座った。

「なんだお前ら？　お互い知り合い同士だったのか？」

「っ！」

【しまった！】と思った時には既に遅く、シュー先生のせいでさっきまで静かにしていた肉食系女子たちは悲鳴を上げるように声をあげる。

「嘘！　そうなの？！」

「信じられないよう〜」

「紹介してほしいなあ〜」

など好き勝手に言っている女の子たちは置いておいて、私は鋭く先生を睨みつけた。

昨日たった一回頼み事を断っただけなのに、そこまで根に持つことなの？！

「う〜ん。そうだな……俺とソフィアは幼馴染なんだよ」

「えええ！！」

「ちょ、ちょっと！」

私が止める間もなくアレスはクラスのみんなに正直に応えてしまった。

「遅かった……」

私はガクッと肩を落とした。

「へ〜。あの【絶対零度の女】に男の幼馴染が居たんだな」

「っ！」