「知らない」

「そうなの? ソフィアだったら何か知っているかと思っていたのに」

「興味のない事に頭を使いたくないのよ」

「興味がないって……」

私は鋭くミッシェルを睨みつける。

「ひっ!」

ミッシェルは身を縮こませると目に涙を浮かべる。

「私は勉強中なの……話しかけないで」

「で、でも――」

ミッシェルから目を離した私は魔法書に目を戻した。

ミッシェルはクラスメイトの中ではよく私に声をかけてくる子だ。当然、私にとっては迷惑なことだった。

どうでも良い話題を振られたり、授業中に分からないことを聞いてきたり、正直に言うとミッシェルみたいな子が一番嫌いだ。

シュー先生は黒板にでかでかとアレスの名前を書くと、アレスに自己紹介するように促した。それを見て頷いたアレスは笑顔を浮かべると名乗り始める。

「みなさん初めまして、アレスです。まだこの学校には来たばかりですので、色々と教えていただけると幸いです」

そして最後に王子様スマイルをこちらに向けると、静かにしていた女の子たちの歓声が一気に湧き上がった。

「きゃ〜アレス様!」

「こちらこそお願いします!」

「素敵!」

などの声が周りから上がり私は両耳を手のひらで抑えた。

だから肉食系女子って嫌いなんだ。

そもそもの元凶であるアレスを睨みつけると、私の視線に気がついたのかアレスは返事の代わりに軽く手を上げてくれた。

「アホかあいつ」

そんなことしたって返事を返すわけでもないのに。

「じゃあ自己紹介も終わった事だし、アレスはソフィアの隣の席に座ってくれ」

「……は?」

何でアレスが私の隣なの? 私の右隣はミッシェルで、左隣は最初から席なんて用意されていなかったし。