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翌日――

アレスは黄雫の魔法使いとして、私のクラスへと配属されることになった。

”転校生が来る”と言う噂は昨日のうちに校内全域に広まった。あの有名な“アレス”が来るなんて知ったら、誰でも驚くしそわそわするものだ。

だから私は今もの凄く機嫌が悪い。

「お〜い、みんな静かにしろよ」

今日は珍しく教室に入ってきたシュー先生を見たクラスメイトたちは、慌ててそれぞれの席に戻った。

こういう日に限って教室に顔を出すっておかしいでしょ……。

先生は軽く咳払いをすると話し始める。

「新聞の記事を読んで知っていると思うが、今日は転校生を紹介するぞ〜」

いかにもやる気のなさそうな声のトーンで、シュー先生は教室の扉を開ける。

教室に入って来たアレスは軽く頭を下げると、教卓の方へと歩いて行く。

とても目立つ赤髪に整った容姿をしているせいか、クラスの女の子たちはうっとりとした表情を浮かべながらアレスを見つめていた。

噂で耳にしたけど……どうやらアレスは女の子たちにとっては理想の男性像らしい。

前の学校を首席で卒業し、最年少ながらも数々の難事件を解決して警察とも行動が出来る。おまけにイケメンで困っている人はほっとけない性格だ。

つまりアレスは、世の女の子たちが男の子たちに求めている物をほとんど持っていることになる。そんなの女の子たちが知ったら放って置くわけがない。

今でもこのクラスに居る肉食系女子たちは、アレスのことを狙っているのだから。

「本当にアレス君このクラスに配属されたんだね」

魔法書を読んでいた時、隣の席から気の抜けたような声が聞こえてきた。

「アレス君ってどんな人なのかな?}

席に座っている紫髪を持つ“ミッシェル”が、紅色の瞳を向けて、私にそんな質問を投げかけて来た。私は軽く息を吐いて魔法書を読みながらそっけなく応える。