「私から話してもいいけどあなたから話す?」

「話すか話さないかは俺が判断する。だから勝手な行動はしないでくれ」

そう簡単にこいつの思惑に乗るわけには行かない。こいつはただ単に俺をソフィアに近づかせようと思っていない。何か別の狙いがあるはずだ。

「あらそう? ならソフィアに興味を持ってもらえるように精々頑張ることね」

テトはそう言うと、ソフィアの後を追いかけるように階段を下りていった。

「……あいつ、いつからソフィアの隣に居るんだ?」

俺とソフィアが一緒に遊んでいた頃はあいつの姿はなかった。あの頃のソフィアは、まだ使い魔の召喚すら知らなかったはずだ。

「となると、俺とソフィアが会わなかった四年間の間になるな」

詳しく調べたいところだが、あいつは使い魔の中では優秀な方だ。俺が自分のことを調べているなんて情報なんて、直ぐに掴むことが出来るだろうし。

ここはしばらく様子を見たほうが良さそうだな。

今はあいつのことよりも、“あいつら”を追いかけないといけない。

「黒の魔法教団……」

俺は小さくそう呟き胸ポケットから手帳を取り出す。

「一刻も早く教団を捕まえないと……」

右手に掴んだ手帳に力を込めたあと、中身を確認するようにページを一枚めくった。

黒の魔法教団――

それは“闇魔法”を使う集団のことだ。

教団はここ最近、雫を抜いて回っている。目的は不明だが教団の狙う雫にはある共通点がある。それは魔力の数値が高い雫だ。

魔法使い誰もが無限に魔法を使える、というわけではない。

自分の体内にある雫の大きさによって使える魔法や種類だって限られて来るし、雫が大きければ大きいほど上級魔法を使いこなすことだって出来る。

教団はより強い雫を持った者を狙い、何らかの方法で体内から抜き取っているんだ。

「雫を集めて何をしようとしているんだ?」

体内から雫が抜かれれば、七日後には有害な部質であるマナに体が蝕まれ死に至ってしまう。七日を過ぎると肉体は砂と化し消えてしまう。そうなってしまったら、肉体を調べることが出来なくなってしまう。

病院の方でも、今回の事件が異例過ぎるせいで対応が遅れている。

警察も被害者から詳しく話を聞きたいところだが、次々と雫を抜かれていく者たちが増えていくため時間が限られてしまっている。

だから最近は俺独自で動いていることの方が多いんだ。警察と違って俺は一人でも捜査が出来るからな。

被害者から聞いた話、数少ない目撃情報、ここ数日で得られた情報を照らし合わせて、教団がアジトにしそうな場所を虱潰しにあたってみたがどれも外れだった。

「これ以上被害を出さないためにも、奴らのアジトと雫を体内に戻す方法を見つけないと……」

手帳を胸ポケットにしまい、踵を返した俺は理事長の元へと戻った。