「絶対零度の女って意味は、そのうち知ることになるわよ」

「それはひとまず置いておくよ。それでお前は俺に何を望んでいるんだ?」

俺は目を細めてテトを見下ろした。テトも黄金に輝く瞳を細めて軽く俺を見上げる。

「話が早くて助かるわ」

「そんな風には見えないな。今のお前は俺に何て言えば、ソフィアに近づいてもらえるのか考えているところだ」

「あら、そう見える?」

「ああ、見える」

俺はテトにはっきりとそう告げた。

事件現場で目撃者から事情聴取をする際、俺は相手の目つきと表情、そして相手の言動に注目しながら聞いている。それは目撃者の中に、犯人がいる可能性があるからだ。

常に周りに気を配りながら捜査し、目撃者からの証言と現場の確認。あとは歩き回りこの目で確認する。

そんなことばかりやっているもんだから、目の前にいる人物が嘘をついているかどうかは直ぐに見抜けるようになった。

「お前の望みは、俺がソフィアに近づくことだ。俺だってソフィアと仲良くしたいと思っている。だからお前の望みを叶えてやっても良いけど、そのための材料がまだ揃っていないんだ」

「それならあるじゃない?」

「は?」

テトは瞳を鋭く光らせると思わぬところを突いてきた。

「禁断の図書室への入室許可」

「っ!」

その言葉に目を丸くした俺の頬に冷や汗が流れる。

「お前……知っているのか!? 俺が理事長からあの図書室の鍵を預かっていること……」

「さあ……どうかしらね。私はただソフィアがその図書室に、入りたがっていることを言いたかっただけよ」

「俺が鍵を持っていることをソフィアが知れば、あいつは間違いなく食いついて来るだろうな」

ソフィアだって今以上の知識や力を欲しているはずだ。でもだからと言って俺があの図書室に入るのと、ソフィアが入りたがっている理由とでは大きな違いがある。