俺はゆっくりと振り返り、声の主を見下ろした。

「テトって言ったか?」

「あなたと会うのはこれが初めてね。私はソフィアの使い魔として契約しているテトよ」

「お前に一つ聞きたいことがある。ソフィアは何で俺のことを嫌っているんだ?」

もしかしたら俺は知らないところで、無意識にソフィアを傷つけていたのかもしれない。

だから使い魔であるテトに聞くことで、何か分かるかもしれないと思った。

「あなたはソフィアと仲良くしたいの?」

テトの言葉に俺は大きく頷いた。

「仲良くしたいと思っている。……でもソフィアが嫌がるなら、俺は自分から近づくことはしない」

「ふ〜ん。でもあの子はあの子なりに、優しく言ったつもりだけど?」

「どこが優しくだ! 凄くツンケンした言い方だっただぞ!」

何がおかしいのかテトはクスクス笑う。

「今はそう感じるかもしれないけど、きっとそのうち分かるわよ」

「……そうかよ。でも今のところ一つだけ分かることがある」

「それは?」

テトに聞こえやすようにしゃがみ込んだ俺は、にっこり笑うと言う。

「あいつが俺と関わりたくないってことだ」

俺の言葉を聞いたテトは、じっと俺の顔を見つめると口を開いて言い切る。

「それは違うわ」

「えっ!?」

違うってなんだ? あいつが言った“他人同士”って部分で、俺とは関わりたくないって言っているようなものだろう。

「あなたってそれでも探偵? 人が言った言葉の意味を深く読み取るもできないのかしら?」

つ、使い魔に侮辱されると腹が立つ……。

「さっき私が言ったこともう忘れたの?」

「さっき言ったこと?」

テトの言葉に俺は首を傾げた。

さっきの会話の中で、重要なことを言っているように思えなかったけど?