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一階へと下りる階段の近くまで走って来た時、ソフィアの後ろ姿を見つけた俺は慌てて駆け寄り腕を掴んだ。

「待てよソフィア!」

息を整えている俺の姿をソフィアは少し振り返って見てくる。

「俺……何かまずいこと言ったか? 言ったなら謝る」

「……違う。アレスは何も悪いこと言っていないでしょ」

「だったら……どうしてあんな顔をしたんだ?」

ソフィアは再び気まずそうな表情を浮かべると、俺が掴んでいた手を振りほどいた。そして体をこちらに向けると言う。

「アレス……今から私はお前に宣言する」

「は……はあ?」

ソフィアが何を言いたいのか分からなかった。

俺に宣言するっていったい何を?

「私は勉強でも魔法でも、何一つ負ける気はないから」

「な、何一つって? どういうことかちゃんと説明してくれないか!」

「悪いけどそんな時間はないの」

ソフィアは一歩後ろに下がると背を向けると言う。

「今日から私とアレスの関係は、幼馴染じゃなくてただの“他人同士”だから」

その言葉に目を見開いた俺は言う。

「さ、さっきから何を言いたいんだよ? 意味が分かんね」

「別に理解してくれなくてもいいよ」

ソフィアはそう言い捨てるように言うと、階段を下りて行ってしまった。

「……なんだよ?!」

ソフィアの様子が気になって追いかけて来たのにあの態度はなんだ? そんなに俺と会うのが嫌だったのかよ?!

「俺は……」

俺はソフィアに会えて嬉しかった。四年ぶりに会って見た目も雰囲気も変わっていた。そのせいで少し戸惑ったところもあったけど、それでもソフィアはソフィアだった。

喧嘩がしたいわけじゃない。ただ昔みたいに一緒に遊んで、お互い悩みがあるなら相談しあいたい。

ただそれだけなのに――

「あんなこと言われたのにまだソフィアのことが気になるの?」

そう思った時、直ぐ後ろで声がした。