「少しだけですよお父様」

「ああ、構わない」

ソファに座りかけたソフィアは、俺の姿に気がつくと何故かぎょっとした表情を浮かべた。

「なっ!」

体を小刻みに震わせ鯉のように口をぱくぱくさせながら、俺を見てくるソフィアの様子に首を傾げた。

もしかして俺のこと思い出したのか?

「ソフィア覚えているか?」

「っ! お、お父様?」

理事長の声に我に返ったのか、ソフィアはゆっくりと理事長に目を戻した。

「覚えていないのか? 昔よく一緒に遊んでいたじゃないか」

「そ、それは……そうですけど」

ソフィアは少し気まずそうにしながら、横目で俺の様子を伺っていた。

そんなソフィアの姿を見て声を掛けるべきが少し悩んだが、俺は声を掛けることにして口を開く。

「久しぶりソフィア。ちょっと見ない間に大きくなったな」

「あ、アレス……」

「お前には言っていなかったけど、この学校に通うことになっているんだ。会う機会があったら一緒に勉強したりしよう」

そう言ってソフィアに手を差し出した時だった。

「だ、誰がお前なんかと!」

ソフィアは勢い良く俺の手を払い除けた。

「え……」

目の前の動きがゆっくりと流れていき、何が起こっているのか分からなかった。

「お父様……約束通り少しだけお話しました。魔法書を今直ぐ下さい!」

「それならテトに渡してある」

「では失礼します」

ソフィアは理事長に軽く頭を下げると、一刻も早くこの場から立ち去りたいのか、足早に部屋から出て行ってしまった。

「…………何かまずいこと言いましたか?」

「そんなことないさ」

俺はソフィアが出て行った方へと振り返る。

四年振りに会って色々と話したいことがあった。でもあの表情からしてソフィアは、俺に会いたくなかったように思えた。でも何であんな表情を浮かべたのかが気になる。

俺は理事長に頭を下げソフィアの後を追うため部屋を飛び出した。