少し振り返ってソフィアの姿を確かめた時、俺は深く息を飲み込んだ。

翡翠色の髪に透き通るような薄緑色の瞳は、今朝俺のことをじっと見つめてきていた女の子のものだった。

間違いない。

あの時、俺を見ていたのはソフィアだったんだ。

俺の姿に気がついたソフィアは、クールな表情を歪めると理事長に確認を取るように聞く。

「お客様がいらしているのに、私をこの部屋に招いても良かったのですか?」

「ああ、大丈夫だ。こっちへ来なさい」

「結構です。私はただ魔法書を取りに来ただけですから」

実の父親に対してソフィアはそう冷たく言い放った。

「そうか……残念だよ。久しぶりに会えたというのに」

「久しぶりと言っても、三日前に顔を合わせたはずですが?」

ソフィアは少しイライラしているのか、声のトーンが少し低くなるのが分かった。

そういえば聞いた事があった。理事長は一人娘であるソフィアのことが可愛くて仕方がなく、めちゃくちゃ溺愛していることを――

俺は苦笑しつつソフィアを見上げた。

よく見るとソフィアの肩の上には使い魔であろう黒猫が乗っていた。

雰囲気も前とだいぶ違って凛として見えるが、とても近寄りがたいオーラを出しているのを感じる。

「そうだなあ。ソフィアが私をお話をしてくれるなら渡しても良いぞ」

「……ピキッ」

ん? ちょっと待てよ……変な音がしたぞ?

「お父様……私は早く寮に戻って勉強がしたのですが」

苦笑しながらそんなこと言っているけど、背後に真っ赤なオーラが漏れ出ているのが見えるんだけど?!

「少しだけだから付き合いなさい」

理事長は座るようにソフィアを促した。ソフィアは重々しく溜め息を溢すと俺の隣へと歩いて来た。