「でも今の君は警察と一緒に事件を追っている。その若さで警察と捜査が出来るなんて凄いことだ」

警察と行動を共にすれば、警察内部でしか分からない情報を得る事が出来る。逆に俺が知っている情報も警察に提供することが出来る。そういったことが条件で俺は警察に手を貸している。今回の新聞の記事の内容もそうだ。

ここ数日、新聞には俺の記事がいくつか掲載されていた。その内の一つが“通り魔を捕まえた”となっている記事だ。表向きそう書かれているが実際のところ違う。

なぜ記者がそんな記事を書いたのかというと、俺がそう書くように頼んだからだ。警察の人たちと話し合って、事件の詳細を載せるのを控えたんだ。

「だからアレス君には期待している。君なら必ず、この事件を解決に導いてくれるだろうと」

「ありがとうございます、勿体無いお言葉です。こんな俺をこの学校に招いてくれたことは本当に心から感謝しています――」

何て言っているけど未だにこの人の真意は読めない。俺と話している時だって、ただずっとニコニコしながら話しているだけだ。このままだと、この人の本心を知る前に時間がなくなってしまう。

「アレス君には小さい頃からソフィアが世話になっていたからね」

「……ソフィア？」

その名前を聞いた時、俺の脳裏にある一人の女の子の姿が浮かんだ。

ソフィア……確か理事長の一人娘で、小さい頃よく一緒に遊んだ女の子だ。

いつも俺の後ろばかり追いかけて来て、俺の真似ばかりしていた。笑うと可愛くて、ちょっとしたことで直ぐに怒ったり泣いたりして、喜怒哀楽がはっきりしていた子だった。

それで口癖のようにいつも言っていた。

「いつかアレスを超えるくらい勉強して、追い越してみせるんだから！」

懐かし記憶が過り軽く笑みが溢れた。