「あ〜もう! イライラする!」

長い階段を駆け下りながら私はそう叫んだ。

やっぱろあの先生は私に碌なことしか頼んで来ない! おかげで今日も勉強の時間が潰れてしまったではないか!

「何が“数日アレスと行動を共しろ”、だって? 何で私があんな奴と!?」

「良いじゃないソフィア。四年ぶりに再会出来るチャンスじゃない」

「私はあいつと会うつもりはないし、馴れ合うつもりもない!」

もう二度と絶対に先生のところに行くもんか! 緊急で呼ばれたとしても絶対行かないんだから!

♢ ♢ ♢

西棟から出た私は寮に向かって足早に歩いて行く。するとテトが何かを思い出したように手を叩いた。

「そうだソフィア。あなた前からお父様に用事があったでしょ?」

「お父様に?」

歩く足を止めた私はテトの声に振り返る。

「確か……新しい魔法書が届いたから取りに来るように言われていた気がする」

「それなら食堂に行く前に寄って行けば?」

テトの言う通りこのまま取りに行った方が早いかもしれない。

「そうだね。新しい魔法書がどんなものか早く読んでみたいし」

「なら……飛んで行かない?」

テトはニヤリと微笑むと言う。


そんなテトを見下ろし私は目を細めてもう一度言う。

「さっきも言ったけど、誰かに見られたらどうするの?」

「私もさっき同じことを言ったわ。ソフィアなら、そんなこと気にしないでしょ?」

「……」

数秒間テトへと視線を向け、軽く溜め息を溢してから私の体は軽く宙に浮く。

「この魔法って黄雫の魔法使いが使うにはまだ早い魔法なんだよね……」

だから誰かに見られて変な噂を立てられたくないけど、食堂が開くまで時間は限られている。これも仕方がないか……。

そんな私をテトは満面の笑みを浮かべて私を見てくる。

本当に変な子……。

テトが肩に飛び乗り私たちはそのままお父様の部屋に向かった。