「今回の事は……お兄様を止める事が出来なかった私たちに責任があります。そのせいでソフィアさんを危険な目に合わせてしまいました。この度は……本当に申し訳ございませんでした」
 
カレンさんは苦しい表情を浮かべて立ち上がると頭を深々と下げた。そんな姿を見た私は一つ気になっていたことを聞いてみることにした。

「あの……サルワはどうしてあんな事を……?」

「……私のせいです」
 
カレンは腰から下げていた魔剣を取ると鞘から抜いて見せてくれた。

「この魔剣――サファイアは氷の女神の加護を受けた物なんです。この魔剣を手にした時、私は周りに【氷の女神の加護を受けし少女】と呼ばれるようになりました」
 
【氷の女神の加護を受けし少女】という名前は聞いたことがあった。

何百年も主を選ばなかった魔剣サファイアが、ある日一人の少女を主に選んだ。どんな理由でサファイアがカレンさんを選んだのか詳しくは語られていない。

しかし何百年ぶりにサファイアを使いこなす人物が現れた事によって、その時の当初は新聞にも大きく取り挙げられテレビでも放送された。

でもそれがサルワが道を踏み外すきっかけになってしまったのかもしれない。

サファイアを鞘に戻したカレンさんは再び苦しい表情を浮かべると言う。

「お兄様は私のあこがれの存在でした。誰よりも人の未来を考えることが出来た人で、将来は人の為になる研究がしたいと言っていました」
 
私は黙ったままカレンさんの言葉に耳を傾けた。

「でもそんなお兄様を歪めてしまったのがこの私なんです」

「カレンさん……」

「私が【氷の女神の加護を受けし少女】と呼ばれる度、両親はお兄様を否定しました。【お前のやっていることは無意味だ】、【兄ではなく妹の方が才能のある子だ】と言われ続けたお兄様は耐えられなくなり四年前に家を出ました」