「今度雑用係みたいな仕事を頼んで来たら、研究室の中を一瞬で炭にしてやる」

「あらあら、これは相当恨んでいるわね」

「別に恨んではいないよ。私はただ貴重な勉強時間を削られるのが嫌なだけ」

「そうかしら? 私にとっては勉強しすぎのあなたに良い休みが取れると思っているんだけど」

「勉強より疲れるじゃん」

「……それもそうね」

そんなに勉強して何が悪いというんだ。勉強することは将来にも繋がるし、この先の自分にとって損をする物じゃない。

テトにはよく“勉強のしすぎよ”、“いい加減ほどほどにしなさい”などと言われることがるけど、いくら言われても勉強をやめる気にはなれない。アレスに近づくためにも勉強を続けなければならないんだ。

「ほら、やっと半分まで来たわよ」

「やっと半分……」

「まだまだ最上階まではあるわよ。のんびりと行きましょう」

そんなのんびりと登っていたら朝食を取るのが遅くなってしまう。でも最上階まではまだ時間掛かりそうだ。いざとなったら瞬間転移(テレポーテーション)の魔法を使おう。


♢ ♢ ♢

それからやっとの思いで最上階への階段を登り終え、先生が居る部屋の前へと歩いて行く。

「お疲れ様ソフィア」

「何がお疲れ様よ……テトはずっと私の肩に乗って居ただけで、少しも歩いていないじゃない!」

「ここ、段差が高くて登りづらいのよ」

テトは私に見えるように前足を見せる。

次は絶対登らせてやる……。

そう自分の中で誓った私は目の前にある扉を力強くノックする。

「……誰だ?」

低い声が部屋の中から聞こえてきた。

どうやらたった今起きたようだ。相変わらず寝起きは機嫌が悪い先生だ。

「ソフィアです」

「ああ……入ってくれ」

重い扉をゆっくりと前に押しながら部屋の中へと入る。部屋の中へと足を踏み入れた瞬間、私は慌てて自分の鼻を手の平で抑えた。