あの事件から一週間が経った。
 
黒の魔法教団を率いていたサルワは、アレスたちによって警察署へと連行されて行った。

もちろん団員たちもみんな捕まりヴェルド・マギーアを巡る事件は収束へと向かっていった。
 
幸福の星屑(ハピネスアマデットワール)によって雫はそれぞれの持ち主の中へと戻り、アレスのお母さんの雫も無事に戻ってきた。
 
私はというと、あの日の事件のことをあまりはっきりとは覚えていなかった。

記憶が欠如しているところもあって、しばらく病院に入院することになった。でもアレスは私がしたことを簡単に説明してくれた。
 

サルワによって雫の結晶体の魔力全てを収める事が出来なかった私の雫は、暴走してしまった。私は自分が暴走した時の記憶を持っていない。

「はあ……」
 
深く溜め息を吐き開いていた魔法書を閉じて窓の外を見つめた。
 
倒れた私はカレンの家族が経営しているという街で一番大きな病院に運ばれた。どうやらカレンからの提案らしい。

近場の病院で良かったと思うけどやはり大きな病院って事もあって、それなりの設備が整えられていた。

そして今回もやっぱり個室が用意され一人で使うには広すぎる部屋を見る度、申し訳ない気持ちになった。
 
少し空いた窓から夏の風が吹き込み私の髪をなびかせる。すると病室の扉が開き私はそちらへと目を向けた。

「ソフィアちゃ~ん! お見舞いに来たよ」
 
そこには大きな花束を持った業火の魔道士ロキさんが立っていた。

「ろ、ロキさん……わざわざありがとうございます」

「そんなに畏まらないでよ。歳だって三つしか違わないんだし」
 
それでもこの人は最年少で業火の魔道士という称号を与えられた人だ。敬語になるのは当然だと思う。